Ｃａｎｖａｓ２　〜茜色のパレット〜
ブランド Ｆ＆Ｃ・ＦＣ０１ 原画 七尾奈留／ちこたむ／魚
ジャンル ノベル系アドベンチャー シナリオ 宮村優／定池真実／田中タクヤ
学園恋愛物 プレイ時間 合計：３３時間
発売日 ２００４／０４／２３（金） 初回：約９時間
価格 ￥８，８００ ２回目以降：約５時間
ＯＳ Windows98/2000/Me/XP 難易度 １（５段階・５が最高）
メディア ＣＤ×３（容量１．５ＧＢ） 評価
（10点満点）		 ６点（物足りない　ｏｒ　マイナス要素あり）
音声 有り
■執筆日：２００４／０５／１６
■前書き

　前作「Ｃａｎｖａｓ　〜セピア色のモチーフ〜」はそれほど評価していたわけでもないのですが、ただ一つ「義理の妹」ネタのシナリオが秀逸だったので、ああいう体験が再度出来るかも、と期待してプレイしました。
■ゲームに関する基礎知識
　
　２０００年１１月２４日に発売された「Ｃａｎｖａｓ　〜セピア色のモチーフ〜」（カクテルソフト／ＦＣ０１．ｃｏｍ）の続編です。ただし共通しているのは作品世界だけで、キャラ設定は一新されていますので、前作を未プレイ、またはプレイしたけどすっかり中身を忘れてしまった、という人でもプレイに問題は有りません。

　シナリオのメインは前作に引き続き「宮村　優」氏。原画のメインはフリーの「七尾　奈留」氏で、「サーカス」ブランド作品（「水夏」「ダ・カーポ」等）で一気に有名になられた後、待望のＦ＆Ｃ作品初参加です。
■設定（粗筋／開始状況）
　
　主人公「上倉　浩樹（変更可）」は、かつては画家を目指していましたが、過去のとある事件で挫折し、今では「撫子学園」の美術教師としてやる気の無い日々を送っています。そんな彼がヒロインたちとの交流の中で立ち直り絵画への情熱を取り戻す様を描いた恋愛ストーリーです。
■操作系

　どんな操作でも１〜２クリックで直感的に行える簡単さがマル。
■原画・ＣＧ

　ヒロイン５人の絵は、「七尾　奈留」氏がメインの２人（鳳仙エリス・桔梗　霧）、残りを「ちこたむ」氏２人、「魚」氏１人、という様に分担しています。という事で前作からの参加者は魚氏だけ、と、原画は殆ど入れ代わっていますが、雰囲気が変化したように思えないのは、前作で伝説を残し今回も健在の「キャンバス塗り（独特な淡いタッチ）」のおかげでしょう。
■ストーリー

　主人公が重い過去を乗り越え絵に対する情熱を取り戻すまでのストーリーが１２月１日から約一ヶ月の期間で描かれています。主人公の過去は”ドロドロの人間ドラマ”を匂わせる要素が有りますが、実は展開そのものは実に明るいので憂鬱になる心配が有りません。

　五人のヒロインの内、メインライター宮村氏・メイン原画七尾奈留氏がコンビで担当した「鳳仙エリス」「桔梗　霧」のストーリーがダブルメインで、他のキャラはあからさまに扱いが低いです（イベントＣＧの枚数が２／３しかない）。

　さて、ストーリーに対する印象はなにより「話が冗長／中身が薄いのに無駄に長い」。たっぷり用意されたヒロインとの会話は、その場その場では楽しいのですが、つまるところ同じような意味の台詞の繰り返しで、ストーリー全体からするとあまり意味は有りません。その反面、ストーリーの転機となるイベントは大した数では有りません。そのため「話がやたらと長いのに薄い」という印象が強烈に刻み込まれました。

　ゲーム期間は二週間ほどとし、日常会話は適度に刈り込み、逆にイベントの量は増やして話に起伏を付け、とメリハリをつけてくれれば良かったと思いますね。３時間ほどプレイしたのに、会話ばかりで実質話が序盤から何も進まないゲーム、というのは時間の無いゲーマーには辛いです。

　あと、基本設定が幼なじみのエリス・霧用に特化しているため、学校で知り合いになった他の三人のヒロインの話はどうしても弱くなっています。主人公が立ち直るきっかけや絵を書き出す過程などに対する説得力が弱いのです。何か数合わせの印象が強かったですね。

　もっとも、個人的には「その他」ヒロインのはずの「理事長代理　鷺ノ宮沙綾」の話がエリス・霧の話すらさしおいて一番面白く感じました。紗綾のぽわわーんとした性格が良かったし、主人公もそれに合わせて誠実なキャラになってますし、主人公が絵嫌いから立ち直る過程が（サブヒロインにも関わらず）エリスや霧のルートより余程自然に感じられました。また彼女が理事長代理で多忙なので会えない日も多いという事も、他のヒロインと比べて無駄なおしゃべりを減らす役に立っており、適度なボリュームだった事も有ります。新人の田中氏が書いた話が一番面白かったと言うのは皮肉ですね。

　パッケージのコピーは「道に迷い歩みを止めたとしても、手を差し伸べてくれる君がいる」と実に格好良いのですが、実際の印象はこんな高尚な感じは無かったです。ちょっと美術要素の濃い恋愛物、程度ですね。
■まとめ
　
　●評価（１０点満点評価）＝「６点」（物足りない　ｏｒ　マイナス要素が有る）

　手軽な操作系・綺麗な絵・軽妙な会話、と、とっつきは良いのですが、数時間プレイするとすぐに底の浅さを感じてしまう作品でした。『外れ』要素は無い手堅いゲームですが、『当たり』要素も見当たらなかったように思います。ストーリーで充実感を得たい人にはあまり向いてない作品でしょう。
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