月姫
ブランド TYPE-MOON(同人) 原画 武内崇
ジャンル ノベル シナリオ 奈須きのこ
伝奇物 プレイ
時間		 合計：３０時間
発売日 ２０００／１２／末日 初回：約７時間
価格 ￥2,500 ２回目以降：約５時間
ＯＳ Windows98/2000 難易度 １（５段階：５が最高）
メディア ＣＤ×1（容量１５０ＭＢ） 評価
（10点満点）		 ８点（秀作）
音声 無し
■執筆日：初版２００４／０８／１６　改訂２００４／０９／０５
■前書き

　「月姫」と言えば、同人ソフトでありながら下手な商業ソフトを遥かに上回る知名度を誇る伝説の作品ですが、色々な事情が重なってプレイする機会に恵まれず、結局発売から三年半以上経ってのようやくのクリアとなりました。
■ゲームに関する基礎知識

　同人サークル「ＴＹＰＥ−ＭＯＯＮ」がコミックマーケット５９（２０００年１２月末）で発表したノベルで、発売直後から質の高さがネット等で評判となり、下手な商業ソフト顔負けの人気作となりました。以後、外伝やコミックアンソロジーの発売などで人気上昇は留まるところを知らず、遂には２００３年秋にテレビアニメ化まで達成しました（アニメ化タイトル＝『真月譚・月姫』）。前代未聞・空前絶後の同人作品です。
■設定（粗筋／開始状況）

　「遠野　志貴」は、九歳の時事故により瀕死の重傷を負い、奇跡的に回復した時、”物の壊れやすい線”を見る力を身に付けていた。この世の全ての物体は、この線に刃を当てる事でいともたやすく破壊される、脆く頼りない存在でしかない。この事実に志貴は恐怖するが、この力を封印する方法を知り、なんとか普通の日常生活を送れるようになった。

　八年後、分家の有馬家で生活していた志貴は、自分を疎んでいた父の死を契機に実家の遠野家に呼び戻された。美しく成長した妹「秋葉」や使用人の「琥珀」「翡翠」達に出迎えられ、この家で志貴の新しい生活が始まった。だがこの時の志貴は、自分が街を騒がせている「吸血鬼殺人」に深く関わる事になろうとは知る由も無かった・・・

　という感じで始まる、伝奇ノベルです。
■ゲーム展開

　ゲームは志貴が遠野家に戻る日から始まり、一日一章の形式で約二週間前後の物語が描かれます。ファーストプレイでは到達できるエンドは固定されていますが、以後エンディングを見る度に分岐が増え、次々と新しい展開への道が開かれます。

　バッドエンドはかなり多めですが、救済措置としてエンド直後にヒント（それもかなり具体的）が出されるため、行き詰る事はまず無いでしょう。
■操作系

　「次の分岐まで早送り」「メッセージ巻き戻し」等、一通りの機能は備わっていますが、「早送り」にすると未読メッセージまで読み飛ばされてしまうのには閉口しました。まあ、同人ソフトですからそこまで文句をつけるのは酷なのかもしれませんね。
■原画・ＣＧ

　原画は「武内　崇」氏。ストーリーが伝奇物のわりにキャラは結構ほんわかした可愛い感じですが、これが物語の雰囲気同様にダークなキャラデザばっかりだったら引いてしまうので、これはこれで良いのでしょう。
■音楽
　
　特に印象無し。
■音声

　無し。
■ストーリー

　「吸血鬼」をメインテーマに据えた本格的伝奇物です。平凡な学生に過ぎなかった志貴が、些細なきっかけから吸血鬼との壮絶な戦いに巻き込まれる様を重厚な文章で描き出しています。

　物語には合計五人の主要女性キャラが登場し、どの人物を中心に据えるか、によって、五通りの物語が展開します。恋愛要素もそれなりには有りますが、あくまでメインは吸血鬼との戦いを主題とするシリアスストーリーで、恋愛はその中の一要素程度に留められています。

　テキストのレベルは実に高く、志貴の体の不調や怪我による苦しみ、壮絶な殺戮の情景、その他、絵で描かれない、或いは描けない要素が頭の中に実にありありと感じられるなど、全く文句の無い出来栄えでした。

　また、全体の構成も実に巧みに作られています。物語の基本的なパーツはどのヒロインのルートでも殆ど同じなのですが、当初謎となっていて途中で志貴が知る事になる”真実”がそれぞれ微妙に異なっているため、結果、物語全体はそれぞれかなり違う展開を見せます。五人のヒロインのストーリーは、序盤こそ同一ですが、途中からは全く別のストーリーとなりましたので、繰り返しプレイが全く苦になることは有りませんでした。

　そして、何より印象的なのがエンディングでしょう。例外的に陽気な結末も有りますが、大半は本当に切なく、心に染み入ってくる物ばかりです。激しい戦いの果てにたどり着いた結末がこれほどまでに悲しく、それでいてＣＧはあまりに美しかったが故に、それぞれにエンディングは心にしっかりと刻み込まれることになりました。


　この様に、展開・心理描写・結末・ボリューム・その他、全ての要素が極めて高いレベルでまとめられており、私が今までに体験したノベルでは最高レベルだと断言できる傑作でした。
■まとめ

　●評価（１０点満点評価）＝「８点」（秀作）

　「文句なしの傑作ノベル」

　文句なしの傑作ノベルです。とにかく思いつく限りの要素において褒め言葉しか浮かびません。世間で絶大な人気を誇っているのも当然の事と素直に理解できました。商業作品と言えどもここまでのレベルに達しているものはそうは無いでしょう。

　同人作品と言う事で、ちょっと入手が困難だとは思いますが、ストーリー主体の作品が好きな方ならば是非とも入手してプレイして欲しい作品です。
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