真・瑠璃色の雪　〜ふりむけば隣に〜
ＡＩＬ（アイル）
対応機種　Ｗｉｎｄｏｗｓ95/98
アドベンチャーゲーム
恋愛物
発売日　２０００年４月１４日
■執筆日：２０００年６月１０日
■評価

（５点満点で）４点
・グラフィック＝４点
・シナリオ　　＝３点

一言コメント＝ＤＯＳ版のリメイク｡数年寝かした事で熟成された味わいに。
■プレイ時間

初回＝１０時間１０分
合計＝３６時間００分（全エンドを確認）
■ゲーム紹介

　アイルの製作チームの一つ「チームＲＩＶＡ」の開発した恋愛系アドベンチャーゲームです。 ”金髪の雪女”などの非日常的なキャラクター達との恋愛を描いたファンタジー系の作品です｡

　１９９７年に発売した「瑠璃色の雪」（ＰＣ−９８０１版）を、Ｗｉｎｄｏｗｓ版としてリメイクしたもので、基本的な部分は同じですが、前作に登場したヒロインの設定が９人中５人まで変更になるなど、ベタ移植ではなく半分新作に近い作品となっています。
■スタッフ

監督・企画・原案＝リバ原あき
シナリオ＝リバ原あき・樋口和真
原画＝リバ原あき
■ストーリー

　主人公「真部　博士（まなべ・ひろし）」は、幼い頃母親を亡くし、しかも父親も交通事故で失ってしまったため、マンションに移り住んで一人暮しを始める事になりました。しかし引越し早々、床に爆弾で大穴を空けてしまいます。穴の中に入っていた古ぼけた壷の封印を剥がしてみると、中から金髪の和服美女が飛び出してきて、「自分は雪女だ」と名乗ります。なりゆきから、博士は自称・雪女の「瑠璃」との奇妙な同棲生活を開始する事になりますが・・・・・
■ゲーム概要

　ジャンルはアドベンチャーゲーム。内容はオーソドックスな恋愛物です。攻略できるヒロイン達は１０名で、学園系ヒロインと、瑠璃関係の非日常系ヒロインの二組に分類されますが、全員違和感無く一つの世界に収まっています。

　物語は、前半はコミカルに展開し、ヒロインが一人に絞り込まれる後半からはややシリアスになりますが、決して落ち込むような暗さは有りません。

　ゲーム期間は１１／２４〜翌年１月中旬（最長１／１３）の約７週間で、一日単位で進行します。１２／２４のクリスマスイブまでは全キャラ共通の展開で、２４日にヒロインの絞り込みが行われ、正月前後くらいで完全に一人のストーリーに分岐します。

　ゲームシステムは「行動できる場所がマップで表示され、どこかに移動するたびに時間が少しずつ経過する」というタイプです｡各ヒロインの位置はマップ上の顔ＣＧでで確認出来る様に設定出来るため、当てども無く街をウロウロしたり時刻表を作ったりする必要は有りません。また、各ヒロインは（分刻みで移動したりせず）一つの場所に長時間滞在してくれるので、複数のヒロイン全員にアプローチしてもまだ時間が余るくらいで、キャラのスジュールのバッティングに悩む事はまず起こりません。

　さらに、便利な事に時間の早送りモードが有り、目指すヒロインのシナリオ毎に、フラグの立たない不要な時間はカットする事が出来ます｡しかもこのはや送りモードを使用していても、マップ上のキャラの顔ぶれが変動する度に「早送りの続行／中断」を聞いてくるので、目的のキャラが出てきたのに通りすぎてしまって悔やむ、という事も起こりません。

　その上に、一回でもエンドを見れば、以降は「愛情値ウインドウ」「ヒントモード」が使用可能となり、常に全キャラの愛情値を確認したり、ここぞという選択肢で「どちらの選択で誰のストーリーに入るか／外れるか」を教えてくれますので、これさえ有ればまず攻略には困りません。

　以上の諸々のシステムのおかげで、プレイヤーはスケジュール管理にあくせくすることなく、気持ちにゆとりを持ってプレイが可能となります。実に嬉しいシステムでした。

　また、インターフェースでは、アイル伝統の「セーブポイント２００箇所」が圧巻で、何の気兼も無しに潤沢に使える上に、何時でもセーブ＆ロードが可能、セーブ日時・ゲーム中の日付時間・状況・ＣＧが表示されるなど、到れり尽くせりです。メッセージ巻き戻し機能は当然搭載で、さらに過去のメッセージも音声再生が可能、と気配りがされています。また、その他にも、ウインドウ・サウンド・メッセージ速度・ヒントモード等、きめ細かい指定が可能になっており、使い勝手は本当に良いですね。


　おまけモードは、ＣＧ関係（ＣＧ・サービスシーン・エンディング）、ＢＧＭ、おまけシナリオ、スタッフコメント、など、目一杯用意されており、こちらも充実の一言です。
■原画・ＣＧ

　原画は１９９７年版と同じ「リバ原あき」氏です。絵柄は３年経っても殆ど変わっていませんし、原画の構図は前作とほぼ同じですが、Ｗｉｎｄｏｗｓ時代の塗りで処理されているので、絵に関してはかなり印象が良くなっていますね。ただキャラの立ち絵は「頭身のバランス」がおかしいという気がしてなりません（胴体が短すぎる気が・・・・・）。

　また、前作から引続き出演しているヒロイン９名の内、実に５名がデザイン変更になっているのは結構ショックが大きいです。まあ、若葉・双葉の双子＆香織先生は設定が微妙に変更になっているので素直に受け入れられるし、雪那さんは大人っぽくなったのはシナリオの雰囲気の変化のせい、と割り切れるのですが、綾霞は・・・・・、私の好みからするとどう見ても「改悪」です。あう〜、前作のデザインの方が１０倍良かったよ〜。
■ヒロインたち

・瑠璃（るり）
　　金髪で和服の雪女。メインヒロイン。ボケ系キャラ。過去の記憶がない。変更無し。

・こるり
　　ちびっ子雪女。老人ぽい口調。小悪魔系。瑠璃の過去を知るらしい。「真」で追加された新キャラ。

・永輪陽子（ながわ・ようこ）
　　眼鏡っ子の幼なじみ。世話焼き。変更無し。

・星野恵（ほしの・めぐみ）
　　後輩。魔術部所属。思い込みが激しい。変更無し。

・三ツ矢美弥（みつや・みや）
　　バイト先のアイスクリーム屋の店員さん。ＰＣ−９８版では”三矢”美弥。

・今日野香織（きょうの・かおり）
　　学校の先生。お堅い眼鏡キャラ。超常現象ネタが嫌い。ＰＣ−９８版では”教”野香織で眼鏡無しで超常現象大好きキャラ。

・日野宮綾霞（ひのみや・あやか）
　　退魔師。無表情。ＰＣ−９８版から髪型全面変更。

・奥里雪那（おくさと・ゆきな）
　　雪女。人間社会で普通に生活している。幼い娘が一人。ＰＣ−９８版より髪が短い。

・園村双葉（そのむら・ふたば）
　　クラスメート｡双子の姉。真面目。 ＰＣ−９８版から髪型変更（微妙な変化）、天然ボケキャラだった。

・園村若葉（そのむら・わかば）
　　クラスメート｡双子の妹。テキトー。ＰＣ−９８版から髪型変更（ショート→ポニーテール）。
■音楽

　かなり良いです。個人的には「暖かな月」「ＷＩＮＴＥＲ　ＳＴＥＰ」「修羅舞」「ＥＤテーマ　真・瑠璃色の雪」等が好みですね。なお環境が許す限り曲は「ＣＤ指定」で聞いてください。他の設定とは全く印象が違います。
■感想

　「良作」でした。

　物語は、「オーソドックスな学園系の恋愛」と「瑠璃絡みの非日常系の恋愛」が同じ世界に同居していますが、どちらも無理無く展開し、違和感というものは感じませんでした。ヒロイン毎のキャラの書き分けもなかなか上手く、計１０名のヒロインがそれぞれ存在感をアピールしているため、（恵以外は）全員なかなかに魅力的に感じました。各ヒロイン個別の話に分岐するのはクリスマスイブの１２／２４なので、各キャラ単独の部分はストーリー全体の１／３程度しか無いのですが、ボリュームたっぷりのシナリオなので、量が少ないという不満はありませんでしたね。

　まあ、どのキャラもあまり派手なシナリオでは無く「キャラの魅力に萌える」という事はなかったし、エンディングもさらっと流されているなど、いささか薄味では有りましたが、全体的に見れば概ね満足出来るシナリオでした。

　また、また前述の様にシステム面は細かいところまで配慮されており、さらに誤字無し・バグ無しなど、商品としても良い出来でした。

　３年前に前作・ＰＣ−９８０１版の「瑠璃色の雪」を購入・プレイした時は、ゲームシステム・ストーリー共に拙いという印象が強く、内容に思いっきり失望したため、エンドを一つ見た（雪那エンド１）だけで、そのままお倉入りにしてしまいました。　その時は「雪女云々という幻想的なテーマに期待してプレイしたのに、これでは世間に一杯有る、単なる学園恋愛物じゃないか」とガッカリした物でした。しかし、３年経ってスタッフが経験を積んだからか、同じ内容を扱っているのに見違えるほど良い出来になっていました。

　強烈にハートを鷲掴みにする要素は無いのですが、随所で丁寧な仕事をしている事が感じられ、そのおかげでプレイしていて楽しい、そういうゲームでした。他社もゲームを作るならば頑張ってこれくらいのレベルまでは作り込みをして欲しい、と感じさせてくれる秀作でした。
■最後にネタバレ感想

　なし。
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