Ｒｅｆｒａｉｎ　Ｂｌｕｅ（リフレインブルー）
ブランド	エルフ	原画	門井　亜矢
ジャンル	ノベル	シナリオ	茂原　雅人
	恋愛物（感動系）	プレイ時間	合計：２１時間
発売日	１９９９／１１／２６（金）		初回：約４時間
価格	￥８，８００		２回目以降：（記録無し）
ＯＳ	Windows95/98	難易度	１（５段階：５が最高）
メディア	ＣＤ×２（容量６５５ＭＢ）	評価 （10点満点）	９点（名作／年に１〜２本出るかどうかクラス）
音声	有り

■執筆日：初版１９９９／１２／０５　改訂２００４／０５／２９

■前書き

私が「リフレインブルー」をプレイしたのは、特に何かしらの期待を抱いていたからではなく、「エルフの作品だから、取り敢えず仮押えしておくか」程度の認識でしかなかったのですが・・・・ 　・・・・・、あー、もう、ちくしょう！！やっぱり、本当に、エルフは「凄い」です。実に地味かつありきたりな恋愛物にしか見えなかったゲームが、こんなに嬉しくて涙ぐむような結末を見せてくれるなんて、私には予測も出来ませんでした。 　プレイ前は情報も無く、そそられる要素もなく、全く期待せずに購入しただけに、クリアした時には、そのクオリティの高さに、嬉しさに身を震わせていました。エルフの凄さを再認識した一作です。

■ゲームに関する基礎知識

エルフ初のビジュアルノベル。 　原画の「門井　亜矢」氏は同社の「下級生」（１９９６年）以来の登場です。

■設定（粗筋／開始状況）

主人公「松永　善博（よしひろ）」は、８月初旬、バスの添乗員として、東陽学院のサマースクールに付き添って蜻蛉海岸へとやってきました。 　実は、善博は７年前の夏、１７歳の時もここを訪れ、「深景（みかげ）」という女性と惹かれあった過去が有りました。７年ぶりに海岸で過ごす間に折々にふと蘇る深景との想い出。そんな中でどんな出来事が善博を待ち受けているのでしょうか？ 　エルフ初のビジュアルノベル（マルチエンド）です。雰囲気は最初はただの「恋愛物」ですが、やがて「切ない物語」へと変貌して行きます。

■ゲーム展開

ゲームの期間は、８／２〜８の６泊７日で、２日・８日は事実上プロローグ＆エピローグなので、実質のプレイ期間は５日間という事になります。 　選択肢は一日あたり５〜６個程度で、「食事後散歩してみる／部屋でごろごろする」といった感じの物ばかりで、女の子に積極的にアプローチしていくような選択は有りません。それらの選択で展開する物語の流れを身を任せているうちに、何れかの女性と親しくなってゆく、という感じです。 　１〜２日目くらいの分岐でどのキャラとの物語になるか決定し、３日目以降はすっかりオンリープレイとなります。選択肢は少ないので、難易度はさほど高く有りません。特に選択チャート等書かなくても、今まで試していない方の選択肢を選べば簡単にクリアできます。 　なお、このゲームは最初は登場するヒロインは限られており、それらのヒロインのエンドを見る事で新しい分岐・エピソードが次々と登場し、新しい物語が語られ、見えなかった設定が現われていく作りとなっています。この作りが、実は大きなとても意味を持っています。

■操作系

ごくごくオーソドックスな作りで、「既読部分早送り」「メッセージの巻き戻し（音声再生付き）」などが装備されています。ただセーブポイントが６個と少なめで、しかもセーブ日付・時間しか表示されないのはちょっと辛かったですね（ゲーム中の日付も入れて欲しかったです）。

■原画・ＣＧ

原画は、御久し振りの「門井　亜矢」さんです。キャラデザは特に好きでは有りませんが、まあ悪くはないというところでしょうか。塗り・背景等は、特に目を引くところは無いのですが、さりげなく、しかし実に高いレベルできっちりとまとめているのはさすが、と言うところです。

■音楽

時が経ち、作り手は移り変わっても、常に「エルフらしい雰囲気」を維持し続けている事には感心させられます。　私のお気に入りは、エンディングテーマ「ＲＥＦＲＡＩＮ　ＢＬＵＥ」、「想い出の海」ですね。今エンドレスで聞いているところです。

■音声

声優名の表示は有りませんが、全員実に上手いです。プレイするときは、容量が許すならば主人公＆脇役も声も入れてプレイして頂きたいですね。個人的には「管理人さん」（男性）が良い味出していて良かったと思っています。

■ストーリー

本作は、「茂原　雅人」という方がシナリオ・ゲームデザインで、蛭田氏は監修に留まっています。そのため内容を心配していましたが・・・・・、結論から言えば、全く心配する必要は有りませんでした。それどころか、蛭田氏以外にこんなに良いシナリオが書ける人がエルフに居てくれたなんて、本当に嬉しい事です。 　この作品は、最初はただの恋愛物ビジュアルノベルにしか見えません。大まかに序盤の雰囲気を言えば、『７年前の想い出を未だ引きずっている善博と、同じ様に何かを心に抱えている女性とが引かれあってゆく物語』です。 　確かに文章は上手く、誤字も無く、白ける展開も物語の破綻もなく、恋愛物としてはそれなりに良い出来なのですが、序盤にクリアできるヒロイン達の物語は、悪く言えば本当に「それなり」でしか無く、私がエルフ作品に求めていた「エルフらしい凄さ」を感じる事は出来ず、失望を隠せませんでした。 　しかし、この作品は、先にも述べた様に「最初にクリアできるヒロインは決っていて、エンドを見る度にイベント・分岐が増えて行く」というタイプで有ることが、想像以上に大きな意味を持っていました。 　というのは、クリアするヒロインが後になればなるほど話の質が高くなって行く上に、「隠し設定」（というのは適当では無いかもしれないのですが・・・）が、繰り返してプレイするうちに少しづつ見えてきて、単なる「夏の海辺の恋愛ストーリー」から、どんどん印象が変わって行くのです。 　そして、最後の最後になって、今までさりげなく存在を匂わせていた隠し設定が一気に姿を見せ、物語が予想を越えた深さを持っていた事を教えてくれました。 　この「隠し設定」というのは、序盤からその存在を匂わせていますから、特別に勘の鋭い方でなくても、「ああ、見た目どうりの恋愛物オンリーではないだろうね」とは解るでしょうし、なんとなくクライマックスの展開も予想が出来るかもしれません。しかし、クライマックスになって全ての設定（何故タイトルは《リフレインブルー》なのか、等）が明かされる所は、本当に圧巻です。 　そして結末は涙ぐみそうなくらい心にグッと来ました。エンディングテーマを聞きつつスタッフロールを見ながら、うち震えるような余韻に身をまかせていました。 　私の語彙が少なくてこのシナリオの良さを伝え切れないことが悔しくてなりません。しかし、それでも拙い言葉で言うとすれば、それは「本当に素晴らしい」の一言です。

■まとめ

●評価（１０点満点評価）＝「９点」（名作／年に１〜２作出るかどうかクラス） 　「エルフ作品はやっぱり素晴らしい」 　間違いなく『買い』です。 　発売前に掴んでいた情報での「ノベル」で「複数ヒロインの恋愛物」という概要から、「エルフが今さら何故こんな他社の後追いの様な作品を・・・・」と深く失望しましたし、実際触れてみても、序盤はその印象は全く変わりませんでした。しかし、最後の最後までプレイしてみて、そんな上辺だけ見た評価が全くの誤りであった事を痛感させられました。 　マルチストーリー物に共通する欠点、私がマルチ物を嫌う元凶要因、「複数のヒロインを攻略していると、話が代わり映えしないので、最後の頃には飽きてくる」という欠点を、実に見事に、説得力を持って、完全にクリアしていました。しかもラストは涙腺に訴えてくれるハイクオリティな物という、予想もしなかった物でした。 　低い難易度・必然性の有るマルチエンドという点で十二分に評価できるのですが、さらにＣＧ・音楽・文章・操作性などの質の高さも相まって、本当に「ノベルとして堪能できる」作品となっています。 　前宣伝が足りない上に、序盤が盛り上がらないので、今一つ評価されていない気がしますが、この作品の魅力・真髄はストーリー終盤（全体の約２割）に集中していると言っても過言では無いでしょう。 　未プレイの方はもちろん、途中で止めている方も、ラストまで一気に走ってみてください。評価が一変する事請け合いです。本当に素晴らしいゲームに出会えました。

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